前置き
かねひらイーシーパートナーズ株式会社の金平健二です。
この「五階層概念モデルによるECサイト制作」ブログは、ゴンウェブコンサルティングさん主催のismにて学んだことを、自分なりにアウトプットしているものです。理解が違っていたり、個人的な主観がはいっておりますのご了承ください。昨今、ウェブ制作業界でもUXという言葉をよく聞くようになってきましたが、UX自体は例えば家電製品やパソコン、スマホのアプリケーション開発の現場では昔から活用されている手法であり、元々はアメリカから来た考え方です。
仮説立案→プロトタイプ作成→ユーザーテスト→検証 を繰り返し、より良いユーザー体験ができるように改善していくということだと理解しています。
アプリケーションなどであれば、何人かのユーザーにテストしてもらい、熟練のUXチームであれば3回程度のサイクルを繰り返すことで商品の完成にいたる場合が多いという内容を書籍で読みました。しかし、ウェブサイトのUXはECであれば、例えばカートの遷移画面であればユーザーテストを行い、改善できますが、ismで行っているユーザーシナリオをつくりコンテンツを制作していく場合だと、ECサイトのページを閲覧する順番はユーザーによって千差万別でコントロールできるものではありません。そのため、最初になるべく精度の高いものをつくり、あとはサイトをリリースして、データ解析によってユーザーテストの変わりにする、ということが必要になってきます。UXという言葉の定義が曖昧で、範囲が広いですが、このブログでは、ECサイトでユーザーにコンテンツを見せて買う気になってもらえるような、ECサイト上でのコンテンツ体験の向上と、いったような意味で使用させていただければと思います。
五階層概念モデル
ECサイト制作のフレームワークとして有効なのが五階層概念モデルです。
戦略、要件、構造、骨格、表層という五階層によって、ECサイト制作を行うことにより、戦略を実現するためのECサイトを構築することが可能です。
戦略
戦略フェイズでは、ターゲットを定め競合と比較された場合の勝ち目を探ります。そしてそのターゲットで勝ち目があるなら、そのターゲットの市場で充分なマーケット規模があるかを調査します。
実際は3C分析などのフレームワークを用い、市場規模調査、競合調査などを複合的に行い、戦略を策定していきます。
ただし、この段階で求められる価値が見いだせないというのはよくあることです。その場合は、「このようにお客様に認識してもらえば買っていただけるのではないか?」という仮説を立て、それを実現していくための戦略を検討する場合が多々あります。
ECサイトの成否をわけるもっとも重要なフェイズです。その分、立案・確定・意思統一の難易度も高く、時間とコストがかかります。
要件
要件フェイズでは、戦略フェイズで定めたターゲットに対してどんなコンテンツを見せれば買ってくれるか、を考えます。具体的には売るために必要なシステム要件とコンテンツ要件を固めます。
ECサイト制作の場合、ほとんどがASPサービスを利用することが多いので、システム要件に関してはASPサービスの制限内で行う事になります。
そのため、主に要件フェイズではコンテンツの定義、制作がメインになってきます。
構造
構造フェイズでは、要件フェイズで固めたコンテンツを、どのような順番でターゲットにみせるか、シナリオを検討します。戦略から導き出した絶対に必要なコンテンツをユーザーモデルごと(単一ユーザーモデルの場合、新規か既存か)にまとめ、多くのユーザーに見せたいコンテンツを先に見せるようシナリオを作成します。その上でサイトマップを作成します。
骨格
骨格フェイズでは、構造に基づき、それぞれのページの詳細な画面を設計します。
サイトマップを元にユーザーの導線を考慮し必要なガイド、パーツなどについて、主要なページのワイヤーフレームを制作します。まず、基本的なテンプレート的なよくあるワイヤーフレームを制作し、シナリオをどうみせるか、ユーザーが使いやすいか、などECサイトの基本的な骨格を設計します。
表層
表層フェイズでは、これまでのフェイズに基づき、ウェブデザインを行います。
デザイナーと戦略フェイズからの内容を共有し、構造や骨格を具体的なデザインを制作します。
その際、デザイナーが構造、骨格フェイズも検討できるのか、どうかで渡すドキュメントが違ってきます。表層だけを行うデザイナーの場合、骨格を作り込んだ上でデザインを行ってもらうことになります。
しかし、構造、骨格フェイズも習熟しているデザイナーの場合、より精度の高いECサイトに構築できるようになります。
戦略実現のために
これらの各フェイズを行うことで、戦略を実現するためのECサイトにできるのです。
決して各フェイズを順番に行って終わりではなく、検証、確認を繰り返し、らせん状にブラッシュアップしていくことになります。
各フェイズ重要ですが、特に戦略フェイズで「このビジネスに勝ち目があるかどうか」を見極めることがECショップの成否をわけるといえるでしょう。
参考文献
・ECサイト「4モデル式」戦略マーケティング [新版]Google Analytics経営戦略 (WEB PROFESSIONAL)
・なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか?―― 3Cで強化する5つのウェブマーケティング施策
・アマゾンにも負けない、本当に強い会社が続けていること。
・「仮説」「実施」「検証」で利益を最大化! “キーワード有効度調査”からはじめるSEM戦略
・ユーザビリティエンジニアリング(第2版)―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法
・ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」―5つの段階で考えるユーザー中心デザイン (Web designing books)
・誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論 D. A. ノーマン
・IAシンキング Web制作者・担当者のためのIA思考術
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・五階層概念モデルによるECショップ制作の概要
・戦略フェイズ
・要件フェイズ
・構造フェイズ
・骨格フェイズ
・表層フェイズ